足し算の美、引き算の美/ベニス10

ベニス旅行紀、ラストです。

ベニスの石造りの街は重厚で、圧倒的な存在感でした。

パリも美しい街ですが、イタリアの街と比べるとその重さにおいて劣ります。

教会や主要な建築物の天井一つ取ってみても施された彫刻や油絵の緻密さにただただ唸ることしきり。

この情熱はどこから生まれてくるのでしょう?

眺めていて、美しいと感じるよりは、空恐ろしくなってきました。狂気と言ってもいいのではないか?と。



素晴らしいは素晴らしいのですが … だんだんお腹がいっぱいになってくるのです。

西洋の美は足し算の美、日本の美は引き算の美、とよく言われます。

油絵と日本画、教会と神社、クラシックと雅楽 … ビフテキとお茶漬け …。

三島由紀夫じゃないですが、どんなにフランス料理が美味しくても、最後にお茶漬けを食べたくなってしまうのは日本人だからでしょうか?

やはり、私は、絢爛豪華な西洋教会や宮殿よりも、日本のスッキリとした神社やお城をより美しいと感じてしまいます。



明治時代、初めて西洋に渡った志士たちは、今と違って海路で行きました。最初はどこへ行ったのだったかしら?

船から、遠くにベニスの石造りの街が見え、だんだん近づいてきます。それが眼前に広がった時、彼らは何を思ったのでしょう?

圧倒的な重厚感。

たぶん押し潰れそうだったに違いありません。そんな彼らを辛うじて支えたのは武士であるプライドだったとか。

『これからは物質主義の時代だ』と言ったのは誰でしたっけ …?



よく『和魂洋才』などと持てはやされていますけど、

これって、要するに、和魂が西洋化していく過程を言っているだけであって、

実は誉め言葉でも何でもありゃしません、たぶん。

そして、もう喰われてしまったのかもですね? 現代は。



この西洋物質主義国家に植民地にされないために、

血を吐く苦労をしてきた当時の日本人は、また強烈な自己矛盾を抱え込んで苦しんでいました … そんなわれらが先人たちの哀しみに思いを馳せていました。






[PR]
by iroirohitorigoto | 2017-10-29 20:33 | 出不精な私でも旅をする