真っ暗闇/ベニス7

ベニス旅行記を続けます。

ホテルの部屋は3階にあって、安ホテルだからドアの鍵が、昔ながらの鍵で、鍵穴に入れてガチャガチャ回すタイプなのでした。

で、これが、ドアの鍵穴の中が歪んでいるらしく、毎回、ドアの鍵穴に目をつけて中を見ながら回さないと鍵が開かない、というシロモノでして。

とにかく毎回、腰をかがめて鍵穴を覗きながら鍵を開けていました。

ボロいエレベーターでのぼったそこの廊下はコンクリートでひとつの窓もなく、天井に蛍光灯がぼ~っと薄暗くついているだけ。



ある夜のこと、娘は受付ホールでネットをやっており(そこしかネットがつながらない)、私ひとり、一足先に3階に戻ってきて、廊下の部屋の前に立ち、さて、ドアを開けようとバックから鍵を取り出したところで、

バチッという音とともに、廊下が真っ暗にっ!

完全な闇。

闇というのは、たいていの場合、必ず何かしらの光があるもので、たとえそれが星のかすかな光であろうとも、じっと目を凝らして見れば何となく気配が見えるという感じで、本当の真っ暗な闇というのはなかなかありません。

で、あったのですね。

鼻をつままれても分からない闇が。

何せコンクリートの塊の中のことで、ほんのわずかな光もない。

もう、どうしようかと。

とにもかくにも手に鍵は握っているので、ドアを開けようと、闇の中手探りで鍵穴を見つけ、そこに手探りで鍵を入れるのですが、どうしても開かない。もし鍵を落としてしまったら大変だから、鍵はギュッと握ったままで。

隣の部屋からTVの音が聞こえてきていたので、たぶん部屋の中は大丈夫なのだろうと、しばらく必死でガチャガチャやっていたのですが…、やっぱり開けられない。



ついに隣の部屋のドアをバンバン叩いて、「すみません、すみませ~ん」と。TVの音が大きすぎて小さなノックじゃ聞こえそうになかったので。

そしたら、「誰だ?」という声とともにドアがガチャと開いて、

明るい光を背景に素っ裸のおじさんがっ!!!!

「ぎゃ~っ! すみません、すみません、真っ暗で、ドアが開かなくて、すみませ~んっ!!!!」

いやもう、顔を逸らしたまま、たぶん肌色っぽいパンツをはいていたとは思うのですけど、何せ上半身裸で、腿から下の足は毛むくじゃらで、裸足だったし、もう再度確かめる勇気もなく、手で顔を覆い、「すいません、すいません、隣のモノですけど、明かりが~、鍵が~」と下手な英語でしどろもどろに…いやはやいやはや。

その彼も分かってくれて、「ああ。電気が切れたのね」と部屋のドアを一杯に開けてくれたので、鍵穴がしっかり見えて、ドアを開けられました、…はぁ、疲れた。



『漆黒の闇』というのを初めて知りました。

ちなみに、目をつぶってみても、中に星がチカチカ(?)したりして、あの『暗黒』にはなりません。





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by iroirohitorigoto | 2017-10-23 20:21 | 出不精な私でも旅をする