憧れの原点

中学生だったか高校生だったか。

たぶん樹村みのりのマンガだったと思うのだが。

それも定かでなく。

題名も憶えておらず。

ある若い女性が森の中の家でひとり暮らしている。

そこに主人公の少年が。

彼の目を通して、彼女の、静かな、自給自足の生活が語られる。

畑をしたり機織りしたり…確か。

クリスマスになると、

彼女の友人たちがどこからともなくやってきて、

それぞれ手作りの靴やらジャムやらを贈りあってお喋りしあって笑いあって。

少年は『なぜこんな生活をしているのか』と訊く。

彼女は普通の生活をしていたのだけど、病気でもう先がないと知った時、今まで『自分』を生きていなかったと悟り、だから残りの人生は自分の思うとおりに生きたいと願い、親を説得して。

…とかそんな感じの話、たぶん。今となってはもう相当妄想入っているのかも。

もう一度読み返してみたい。



ウチは東京近郊の住宅地の一軒家でサラリーマン核家族。一族みんな東京住まいで田舎なし。

とにかく何でもお店買い。

当時この森での生活に憧れて、

イチゴ買ってジャム作ってみたけど、スーパー行きゃオシャレなイチゴジャムをもっと安く売ってるし、アホらしくなって止めた。

家庭科で、たったひとつの作品も提出したことがない、という不器用さ。

料理もできない裁縫もできない、ついでに釘一つまともに打てない役立たず。


結婚した相手は、フランスで兵役終わったらすぐ外国に出て、オーストラリア行ってアジア諸国彷徨って、日本に落ち着いたフランス男。

パリ生まれでニース行ってカンヌ行って、お父上骨董屋、母上はモデルさんの、ちょっとしたプチブル出身。その反動でか、都会ブルジョア大嫌いの、自然の中で暮らすサバイバル男。

というわけで、結婚以来、最初は山中、水もまともにないところから始まって、井戸も掘ったし、セメントも練ったし…日本でもフランスでもいつも埃の中、料理して繕い物して子供育てて。私には少々過激すぎたかも?

今住んでる家もボロ家買って夫が改築。もちろん私も子供たちも手伝った。

フランスではそういうパターンがよくあると聞いていたが、実際は途中で挫折してしまうカップル、それが原因で別れてしまうカップルも多い。

フランス人にして『よくここまでやった』と褒められるのだから、まあ、相当なことではあったのだ。

少なくない苦しみ悲しみを乗り越えて、今少し落ち着いている。

結婚当初サンマもまともに焼けなかった私が、この30年、あれやってこれやって、余った果物や野菜でジャム作って保存食作って…とにかく何が何だかわからず余裕もなく必死でやってきたわけだが。

で、今でも問題はありその不安の中に生きてるわけだが。

でももしかして、

実は自分の『憧れ』を実現してたのかも?

今振り返る。

こういう手作りの、私的には『生きていることが実感できる』生活、それこそが私の『憧れ』だったのだと思う。昔から。言葉では言い表せなかったけど。


自分一人で実現できる強さを持ち合わせてはいなかった軟弱者の私。

お尻に火がつかないと何もやらない怠け者の私。

そんな私でも、

サバイバル夫に引っ張られる格好で、

今、その『憧れ』の中にいる。

実際はすごい体力のいる生活であることも知ったし、自分の理想とはちょっと違うような気もするのだがw、

これは、幸せなことなのだと今思う。


追伸 ターシャ・チューダーが自給自足生活を始めたのは57歳からだそう。何か勇気づけられちゃったり。




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by iroirohitorigoto | 2017-08-30 19:58 | 見たり/聞いたり/考えたり